顕微鏡下視野
光源 なし(顕微鏡のライトもユニットのライトもつけていません)
顕微鏡下視野
ユニットのハロゲンライト(無影灯)
※肉眼でみる根管内はおよそこのような感じです。
これでは、何があるのか、何をしたら良いのか、どのような器具を使ったらよいのか、情報量が無さすぎて、何もわかりません。
※ルーペにライトをつけていたり、今のLED照明の無影灯なら、これよりは、マシです。しかしながら、ターゲットが深くなればなるほど、小さくなればなるほど、顕微鏡の拡大率と、光量によって得られる情報には、何物もかなわないのです。
顕微鏡のキセノンライトを照射すると、このように見え、何をしたらよいのか、どのような器具を選択すべきか明確にわかり、術者に迷いはありません。
A ズバリ、見えないからです。
歯の治療は、通常は水平位診療といって、患者さんは横に寝て治療を受けます。その状態で術者が正面から見られるのは、前歯くらいです。前歯も裏側は、鏡を使わなければ、見られません。鏡を使っても、歯の中は、深くなればなるほど、見えなくなります。顕微鏡を使った治療では、鏡の使い方によって、前歯〜奥歯の裏側まで様々な場所を正面からも診ることができます。
顕微鏡をつかったおかげで、助かっている歯は数えきれないほどあります。
A.多くの歯科医院では、拡大鏡(ルーペ)を使用しています。顕微鏡を設備していれば、使用すると思います。拡大鏡に比べ、マイクロスコープは肉眼の30倍という高倍率で術野を診る事が出来ますので、治療の内容によっては、治療の精度が格段に上がります。しかし、訓練をつまなければ、様々な状況で誰でもすぐには使えないのが顕微鏡です。ただし、我々が使うルーペも市販で宣伝されているような倍率のものではありません。両者は、使い分けるのがよいのですが、いずれにしても、拡大することが重要なことはいうまでもありません。
日本でも顕微鏡を導入している医院さんも少しずつ増えていますので、これは喜ばしいことでしょう。ただし、”持っている”のと ”使っている” のでは大きく異なります。また、”見える” から ”できる” も違います。
A 術野の状態が、肉眼とは比較にならないくらい、詳細に判りますので、精度の高い治療を行う事が出来ます。もっと簡単に説明すると・・・ 真っ暗な闇の中であなたは、針の穴に糸をとおせますか?では、明るい室内で同じことをやればどうでしょうか? ほとんどの人が的確に作業を終えることができると思います。 お子さんの歯を磨いた経験がある方も多いでしょう。 自分の膝の上に寝かせて、磨いてみて、見えにくい場所はどこですか?歯科医師や歯科衛生士もあなたと同じです。 誰でも見えにくい場所は見えにくいのです。歯科医師だからみえるなんてことはありません。顕微鏡や拡大鏡はその暗闇に ”光” をもたらすと同時にその場所を ”拡大” してくれるのです。 だから結果的に正確な治療を行うことが可能になるのです。一般的には時間がかかると考えられがちですが、 すべての治療においてそうではなく、むしろ、見えているので、短時間で治療を終えられることも多々あります。
A 普通という言い方が適切かどうかですが,日本の保険診療の時間が早すぎるという言い方もできます。本来,きちんとした診断や治療をするためには,むしろ,妥当な時間だと考えています。早く,正確に,丁寧にそれをできる人間はいないと思います。患者さんも多種多様です。治療がしやすい方もいれば,しにくい方もいます。しかし、肉眼で治療を行ったせいで十分な治療が行われず、何度も医院に通う事になってしまうのに比べれば、結果として歯の治療に使う時間も費用も短くなると考えています。治療スピードを競う傾向がある医療には賛同できません。(施術する側も、焦るからです。)
肉眼でみると横の線にしかみえませんが、拡大するとNIPPONGINKOの文字の羅列であることがわかります。肉眼では不可能ですが、拡大すれば(約20倍)、Gという文字を的確に示すことも可能です。
たびたび見ることですが、歯と歯肉の間に歯磨き粉の粒が残留しています。
これは我々からみると、あまり良くないことです。メーカーの説明では「粉砕される」となっていますが、 粉砕されないことが多いのが事実です。
30倍でみた上顎洞粘膜。クレスタル・アプローチも器具や手技がかわることになります。 もちろん、患者さんの負担(腫れや痛み)も軽減されることになります。
装着されているクラウンと歯の間には許容できない隙間がみられます。
それを除去すると…
クラウンの隙間から入った汚れやセメントがたくさん残っています。
顕微鏡を使って綺麗にすれば、この通り!まだまだ大丈夫!!
肉眼で見えなければいい、という訳ではありません。
不適合が原因で、見えている地の部分がまた虫歯菌に浸食され、結果的に再治療を必要とする事態にまで陥ってしまうケースが多々発生しています。 治療においても見えないものは手の施しようがないのです。
根管治療(俗に“根の治療”とか“神経の治療”といわれるもの)は、保険治療では時間がかかった割には痛みがとれなかったりすることがありますが、4本の神経を治療したが、実は5本神経が通っていた等、見えていないが故の理由であったりします。
セラミックによる補綴物をいれるために、虫歯を除去し、適切な形成を施した後(左図)とセラミックが挿入され、合着された後の歯との適合(フィット)を観察しています。顕微鏡で拡大してこのレベルであれば、それほど虫歯の再発はおきないでしょう。
合金の詰め物を外すと大きな虫歯があります。これも歯と歯の間の虫歯なので、顕微鏡を使わないと確実に見て、器具を到達させることは、かなり困難なこととなります。
だいぶ黒ずんでいますが、どこまで虫歯は大きくなっているのでしょうか?
歯肉の下まで虫歯が進行しています。
これをしっかり削り取らないといわゆる2次齲蝕(再発)になります。
虫歯を除去している最中に,神経の一部が露出(露髄;ろずい といいます)することがあります。患者さんにしてみると,そもそもの虫歯の大きさにもよりますが,痛みがなかったのに,神経を取ると言われても,納得できない場合も多いでしょう。歯科医師が大きい虫歯だから神経を取らないといけないと言われたら,ほとんどの患者さんがそれにしたがう。大きい虫歯なんて患者さんには,本当はわからないのです。神経を取ると,根管治療になります。現在の当院では,年間に神経を取る治療をすることは,ほとんどありません。もし,比較的大きな虫歯があるときも,神経を取らない治療法が存在します,神経は取らずにすむなら,取らない方が良いです。そうに思います。
左図:右下の奥歯の奥の面の歯肉に接する部分に大きな虫歯があります。最も磨きにくい場所ですし,よほど注意して観察しなければ,気付かないでしょう。これは,当院のベテラン衛生士が,顕微鏡下での観察で発見した虫歯です。患者さんも気づいていませんでした。これもベテランの経験と顕微鏡下での明るさと拡大視野がもたらす結果です。
中央図:術野の確保と虫歯へのアプローチのために,既存の金属の詰め物は除去しました。奥の面の虫歯を取りきった状態ですが,神経に近接するかなり大きな虫歯であったことが判明しました。症状があって,レントゲンを撮影すれば判明したかもしれませんが,虫歯の発見にも顕微鏡は大きな威力を示します。レントゲン撮影をしなくても、判明する虫歯も多くあります。
右図:スーパーボンドという特殊なセメントを使って露出した象牙質に第一に緻密な絆創膏をはります。これによって,神経を除去することなく虫歯を除去できました。これはまぎれもなく,ベテラン衛生士の観察力によって助けられた症例です。